隔月刊『風景写真』の撮影会 レポート&講評会

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辰野 清さんと訪ねる越後路、春色あふれる松之山へ【WEB講評会】

新緑と残雪のコントラストが眩しい春の松之山で開催された撮影会。
期間中には、美人林の新緑や朝霧漂う棚田、桜の古木などに出合うことができました。
「WEB講評会」では、参加者の皆さんが期間中に撮影した写真の中から、
講師の辰野 清さんがセレクトしてコメントします。


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舘岡保夫さん「はるいろ」
芽吹きが始まり出しても、美人林の池に融雪が残っていることはとても珍しい状況です。残雪が加わることで、芽吹きの緑色と水面に浮かぶ昨年の枯れ落ち葉をスムーズに繋ぎ、春の穏やかな時間がゆっくりと流れています。投影された木々のラインを丁寧に構成しているので、軽やかな春のリズム感も表現されました。


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高橋由香理さん「感喜の歌」
小さな里山にも春が訪れました。古くから信仰の礎とされてきた神社とともに、この桜の老木も多くの人々に敬愛されてきたことでしょう。冬が明けて、満開の桜から受ける生命力の強さは、この地域に生きる人々の心の高まりを意味します。暗い背景に対して半順光となる光の選択も良く、花びらの一枚一枚の色を鮮やかに描くことができましたね。ちょっと色褪せた赤いトタンの入母屋屋根も作品にのどかさを添えています。


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斉藤紀子さん「映り代わり」
雨上がりの水たまりに小さな春の姿を見つけましたね。雨に打たれて散った数枚の花びらに、華やかさの代償ともとれる儚さを描こうとした着眼点が素晴らしいです。多くの方が桜そのものに着目する中で、新鮮な個性を感じさせます。我が子を覗くような構成は、女性ならではの思いやりの表れですね。地表であることを表す水際のラインを少し入れると、散ってしまった現実感が高まり、さらに儚さの後押しをします。


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辻 利徳さん「若緑輝く」
芽吹いて間もない透き通るような若葉の森で、深呼吸をしたくなる作品です。大きな森の中で二本のブナがともに生きている姿が逆光に浮かび上がり、印象的ですね。太陽を樹で隠すことで、木々のシルエットと輝く若葉のコントラストの鮮やかさが際立ちました。勢いを感じる対角線上での構成ですが、画面手前中央に樹を入れて存在感を優先する力強い構成も考えられます。


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内山義昭さん「無題」
残雪がたっぷり残る豪雪地帯ならではの風景。満開の桜を小さめに配置し、その場で感じた空間の心地良さを素直に表現しています。青空に立ち上がる卷雲の爽快さと眩いばかりの残雪とのコントラスト、縦位置での高さへの期待感など、あたかも自分がその場にいるかのような空気感が漂う美しい作品です。左側の森の奥に続くラインは、青空への求心力を削ぐのでカットした方がいいですね。


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小林一郎さん「春の訪れ」
小林さんの作品は広めに撮影された写真が多くありましたが、どれも必要な空間を端正な構成力でまとめていて安定した写真力を感じます。この作品も川のS字カーブを軸に、川柳の新緑をバランスよく配置しています。この日は日差しが強く、コントラストが作画の邪魔をする状況でしたが、一瞬の雲の翳りと緑色をアピールする思い切った露出の判断は適切でした。


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藤井敏雄さん「春暁-2」
同じ場所から撮影した、空をわずかに入れた作品と、空を入れないで撮った写真の選択を含めた評価を、とのことですが、私は空を入れない「春暁-2」を選びました。空を入れた写真は空の効果による遠近感が生まれ、「春暁-2」は、手前の丘を多く入れたので同じような広い遠近感が出ています。そうなると作者が何を見せたいかが注目されますが、「春暁-2」は棚田にたなびく光芒をしっかりと見せています。上下を影のスペースで挟んだ効果も、光芒をより魅力的に感じる一因でしょう。主題が強く感じることで作品は強くなりますから、「春暁-2」の方が構成も含めて優れていると言えます。
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by fukei_photo-tour | 2012-08-04 20:36 | WEB講評会
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『風景写真』の撮影会です


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